河内温泉大学

姓は車 名は寅次郎 人呼んで フーテンの寅と発します

三日太平記から雑感

 親父さんが偉大な芸人で人間国宝桂米朝の息子は、国宝でも亡くなったら財産価値は無いんです、といつか舞台で笑いを取っていました。確かに同じ芸でも壺や木像を作る人間国宝だと遺作を売って現金化出来るでしょう。しかし、笑いなんて録音していてもそうも売れない。その事を、笑いにしたのでしょうか。桂米團治を名乗る小米朝のころでした。
 桂米朝独演会チケット

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 数日前に放送で歌舞伎(三日太平記)を題材にした噺「本能寺」を桂米團治が演じていましたのを視聴しました。彼の芸風が私に合わないのか、彼の落語は気にもする事無くやり過ごしでした。しかし、この外題は三代目桂米朝のDVDを持っていてよく聴く話なので、一度試しにと視聴した次第。
 桂米朝DVD

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 親ゆすりのまくら「青田買い」の説明から入りますが、「祗園で遊んでいた」縁で先代猿之助の歌舞伎公演にも参加したとも語ります。親父さんもよく茶屋話をまくらで使いますが、芸者三人合わせたら200歳くらいになる。そんな姉さん達には芸を「教えて貰った」と言う辺りで差が出ます。その勉強の後が噺の舞台でそれとなく披露される所作や、解説に出ます。
  歌舞伎の幕が開く人間国宝の芸

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  本能寺は芝居噺のなかでも数少ない、お芝居の一幕を見せようというもの。中身は、明智光秀が本能寺で織田信長を殺した事件をお芝居にした「三日太平記」。本能寺春永討死の場。森蘭丸が光秀の軍兵相手の大立ち回りを演じ劇はクライマックスに達する。そんなとき客席にいるお婆さんが持っていた袋からイナゴが逃げ出し、舞台はイナゴだらけ、芝居はむちゃくちゃである。役者がぼやく「えらいイナゴやで」「せやけど、なんでこんなに出てくるねん」「大かた客が青田やから」(注:青田=金にならない客 先行投資という意味もある)
 桂米團治の歌舞伎舞台開幕

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 NHKにすれば大河ドラマの応援団になって、放送の穴を埋めることが出来る。中々の企画でした。桂米團治を使うか親父さんのビデオを使うか悩んだ所でしょう。親父さんのビデオがあれば是非観たかったが、息子さんで良かったと思います。彼も苦労の跡が見えますが、まだまだ芸の未開地が多いようです。今後に期待するとしましょう。
 国宝の落語家の財産なんてオークションでも売れない「芸」ですが、逆に研けばみがくほど銭になります。この銭には相続税が掛からないので、丸儲けですね上手く研けば。

 子のためと 親が良くやる 青田かな <偐山頭火