薩摩半島の東シナ海側に大きな砂州が続くのが「吹上浜」、その名を冠するのが砂州と少し離れた集落に湧出する「吹上温泉」。数軒の旅館や日帰り入浴施設が点在しているが、とても温泉街とは見えない鄙びた佇まいだ。
南九州の観光定番として、知覧へはよく行きますが、資料館に足を一歩踏み込むと何とも言えない厳かな気分になると共に、遺書などを拝見していると号泣してしまう。
ならば、今回は知覧を避けて「吹上温泉」としました。
みどり池を取り囲むように、露天風呂や家族風呂そして宿が点在している。京都にでも移設したら「回遊式庭園」とでも名乗ってもおかしくない設えと手入れの良さ。
加えて、まったりした湯が肌にまとわりつく。青空を眺めて昼寝をしていると、時の経過を忘れる。
そのように浮世を忘れて楽しんでいた気分を衝撃が貫いたのは、「観音堂」だ。吹上温泉から知覧は数十キロしか離れていない。米艦隊に爆弾を抱えて突っ込む、その数日前に彼らはこのみどり荘を訪れて、故郷の父母や愛する人達に思いを馳せ手紙を綴ったという。その一部を旅館の女将が保存して供養をしているのが、この観音堂だ。
涙を避けて吹上温泉に来たつもりだったが、また泣かされた。
路程:鹿児島本線伊集院駅下車バスかタクシー九州自動車道・鹿児島インターから指宿スカイライン 谷山インターより県道22号線
写真:みどり荘玄関 みどり池畔の露天風呂
みどり荘にて
○湯浴みで包もう 神となるよりは人として生きるため