湖北の桜の名所は、余呉湖畔、清水(しょうず)桜、長浜等が語られますが、私にとっての一番は海津大崎の4キロにも及ぶ桜並木です。昭和11年に海津大崎を周回する道路建設に携わり、特にトンネル2カ所を掘削した職人が記念にと植樹したのがこの桜の始まり。以来、地元の人々の「桜守」の努力の甲斐あって、現在でも人を斯様に引きつける。夢を後世に引き継ぐ偉大な職人さん達だ。
さて、桜シーズンには周回道路は大渋滞です。で、学生時代に湖上からヨットで観桜した経験がありますので、40年ぶりにタイムスリップしようと作戦を練りました。この作戦、作家遠藤周作縁の料亭「湖里庵」の女将に話しましたら、そのような思い出の糸を手繰ってこられる方が多いので、最近は近くの浜からの湖上タクシーという手段が流行っているとのことです。同輩が多いと言うことか。
さて、湖里庵では今が旬の真鮒の造り、鮒寿しの頭を使ったおすまし、そして定番鮒寿し等々を頂きます。座敷からでももう十分に海津大崎の桜を楽しめるが、予約通りマキノ高木浜を目指します。浜では、臨時の桟橋が作られて既に仕立て船が待機中です。
往復60分の船旅は桜のトンネルに沿って大浦方向を目指します。以前には考えられなかったシーカヤックや、水上バイクが入り乱れますので、定期航路以外は桟橋には近づけません。周回道路では車と車が頭突き会いを何カ所で繰り返しておられます。昨日までは西行きの一方通行規制がされていたのですが、規制を外すと大変です。
斯様な風景を視線の外に追いやって、桜の回廊を存分に楽しんだと思ったら帆を返して帰路につきます。思いの外早いと言うことは、十分に楽しんだ証左でしょうか。来年もよろしく・・・と中村船長の言葉につい「お願いします」と言いたくなる観桜船の旅でありました。
櫻守(水上勉作)主人公櫻守の弥吉は、死ぬ直前に清水の櫻に埋めてくれと言い残す。