河内温泉大学

姓は車 名は寅次郎 人呼んで フーテンの寅と発します

大嘗祭に摂津国笠縫邑 深江も奉納参加

 天皇皇位継承に際して行う祭祀で、新天皇が即位の後に新穀を神々に供え、自身もそれを食するのが大嘗祭。五穀豊穣と国家・国民の安寧を祈願する神道による儀式です。神事だから天皇家の「私費」で賄うとか何とか、身内からの問題提起があった儀式です。そもそも、天皇家の私費とはと言う点でも、おかしな論議ですね。
 今までやってきたのだから、伝統に則って今回もやる。しかし、形式については節減できるものはしよう・・・でいいのでは。無駄と言えば全てが無駄という思う人もいるはずです。

摂津笠縫邑案内 

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 ぎりぎりで河内、いや正確には摂津国の深江がこの儀式に深く関わっています。これを今回はご紹介します。大嘗祭が良いとか悪いとか言う論議ではありません。深江の菅笠に関しては何度か紹介していますが、大嘗祭に掛けて再びのご紹介です。

深江神社

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 大阪の上町台地の東側に位置する大阪市東成区の深江神社周辺は低湿地帯で、古代から良質の菅草が豊かに自生する浪速の一島でした。良質の菅を求めて第11代垂仁天皇の時代、大和国笠縫邑(やまとのくにかさぬいむら)より、笠を縫うことを仕事とした笠縫一族が深江の地に移住し、菅笠を作り出したのが深江の菅細工の始まりだと伝えられています。そのため、当時の深江は、笠縫島といわれるようになりました。今の近鉄布施駅を貫く商店街の北、旧奈良街道脇に(通称産業道路深江郷土資料館があり深江菅細工保存会が伝統技術を伝承されています。

菅の栽培

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 現在も深江郷土資料館の脇で深江菅細工保存会により菅が植えられ保存されていますが、笠を大量に作る程ではありません。そこで、同じく郷土の名産物として菅笠作りの伝統が残る富山高岡市福岡で栽培されている菅を利用して菅笠が作られ、伊勢の式年遷宮大嘗祭の御菅蓋として献上されているそうです。今回の大嘗祭に献上されるかどうかは詳しく伝えるものはありません、多分受取るが公にしない・・・程度の不文律があるのでしょうか。

奉納されたと同じ菅笠

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 この郷土資料館がある深江神社の前には、昭和に輩出した茶釜製作者で人間国宝角谷一圭」氏の生家があり同氏を顕彰するための施設でもあります。茶釜の製法は元は朝鮮半島や大陸から伝わった「銅鏡」、「剣刀」技術です。深江と菅笠で連携する富山県高岡も鋳造技術の盛んなところ。伝統技術というものはそれが育つ土壌というものがあるのかな、とも考えてしまう偶然ですね。

角谷一圭作の釜

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  深江郷土資料館は土日曜日の午前9時から正午、午後2時から4時半開館。入館は無料です。

 押し照る 浪速菅笠 置き古し
      後は誰が着ん 笠ならなくに  (万葉集巻十一・二八一九)

 

 伊勢参り 浪速管笠 深江宿
      我も買うたり 暗がり行くも   <偐山頭火>