河内温泉大学

姓は車 名は寅次郎 人呼んで フーテンの寅と発します

法隆寺 鐘が鳴るのは柿か苺か

 正岡子規の場合は柿を喰って鐘が鳴り名句が出来たそうですが、我々凡人は何を喰ったら鐘が鳴るのか・・・。除夜の鐘が間近な年末のあわただしい中、斑鳩三ヶ寺をお散歩してきました。子規が喰ったという柿は何処か・・・と云うわけでも無いが、斑鳩の果物と雑感巡りにおつきあいください。

子規の句碑

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 正岡子規明治28年秋、日清戦争に記者として従軍したあと、郷里の松山に帰り、東京へ行く途中大和路に立ち寄った。法隆寺西院伽藍の東の鏡池の脇には当時は茶店があった。この茶店に腰を下ろして柿を喰ったのだろうか。回廊の中には鐘楼がある、偶然に鳴り響いても不思議では無い。大正3年秋、茶店を取り払うこととなり、何か残したいという有志の募金で集まった70円でこの句碑を建碑することとなった。句の原本は残っていなかったので、高浜虚子が子規自筆の句録から写真で文字を起こして碑にしたという。

会津八一の歌碑 

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 現在の茶店は、西院伽藍の西端にあります。大きな茶釜でお茶のサービスが受けられます。その前には、会津八一の歌碑「ちとせあまりみたびめぐれるももとせをひとひのごとくたてるこのたふ」が建碑されています。俳句対和歌の勝負は決着が付けがたいですね。

現在の茶店

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西里の道

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 この西には「西門」があって西里地区に繋がっています。法隆寺を支えた工人集団が住んでいたとも言われます。その端にあるのが「藤ノ木古墳」女性的な美を思わせる円墳にコスモスが映えます。

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 再び法隆寺の南大門の前に戻り東院方向に行くと錺鋲(かざりびょう)を作る工房があります。太鼓や大きな門扉の留め金を作るのでしょうか。場所が場所だけに気になる工房ですね。

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 周囲を見渡しても、柿の気配は無し。そこで、馴染みの苺屋さんへ行きましょう。安村農園さんは自家栽培、その日食べ頃を収穫されて売っている。正月はどうすると聞くと「元旦だけが休み」とか。工場生産なら電源を切ればそれで良いのですが、自然相手では自然に合わせるしかないですね。古都華という品種を2pack買い求めました。味は後ほど。

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 脇の畠にあるのは無花果です。しかも収穫は既に終わっているが、なぜか数個の実を残して他は枝払いしています。果梗(かこう)と言うらしいが、これも風情があります。

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 道すがら、ため池に出ます。池を作る時に集約されたのか、石仏が集められています。置いた人、造った人の思いを今に伝えるのでしょうか。

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 暫く進むと法輪寺に出ます。この寺の周りを「三井」地区と言います。

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なにか彫刻のような柿の木

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 子規が食べたと言われるのが三井地区の柿。収穫が終わっていましたが、木の選定はまだなのでしょうが、造形芸術にも見える幹と枝は人には作れない自然の力を感じますね。

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 赤染の井(史跡 三井)は法輪寺の真裏です。三井の地名は聖徳太子がわが子の産湯に使うため三つの井戸(御井、赤染井、前戴井)を掘ったことから三井と呼ばれるようになった言われます。

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 法起寺に来ると万年柿を売っている売店があります。万年は言い過ぎですが、冷蔵保存して求めに応じて販売しているそうです。道端の登りと塔のバランスも今では当たり前の風景になって来ました。

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 この辺で折り返すと、紅葉と枯れかかるコスモスが上品な和菓子の層のようにも見えますね。「三井の秋」とでも名しましょうかな。

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 まっすぐに元来た方向に戻らず、脇道に入ると三井瓦窯跡の表示と共に登り窯が見えて来ます。斑鳩の寺院の甍を焼いた跡なんでしょうか。隙間から覗くと傾斜に沿って窯跡が保存されています。

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 さらに、進むと堰堤に出ます。堰堤の向こうではゴルフに興じる人々の車が並んでいます。年末に金策に走る人、ボールを探す人、はたまたそれを眺める人、様々ですな。
鴨たちを驚かしてしまいました。

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 ボチボチお腹も空いてきました。斑鳩町の老人センターでは食事だけでも可能なので、そちらへ向かいます。しかし、予期せぬことに「本日休業」とか。小高い位置にありますので、法隆寺の建物の塊のような写真を撮りましょう。

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 結局昼食は、道端のチェーン店で丼としました。内閣府が旗を振る電子決済を取り入れていて、自分の財布から金を出す方が手間が掛かることに前回難渋したので、ならば今回はクレジットカード払い。380円の丼に幾らキャッシュバックがあるのか見物ので二ヶ月後に機会があれば報告しましょう。

複雑な機械で支払います

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苺喰えば ハンドベル鳴る クリスマス    正に冬季

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 旅の目的は「苺」となってしまいました。ここ数年安村農園さんで買い求めていますが、確実に改良されています。今年は特に甘味、それも上品な砂糖を何度もなんども練ったパウダーのような砂糖の様な甘味。そして、果実の表面が滑らかなシルクの舌触りになってきました。これなら「年内予約で一杯ですね」と仰るわけです。
 正岡子規がこの古都華を食べたら、「鐘じゃねえハンドベルだ」と注文するかもしれません。偐山頭火こと「正に冬季」が詠むとキャプションのようになりました。