今回の旅のクライマックスといえば少々オーバーですが、当たっている部分もあります。石原荘との出会いは、十年以上になります。最初は、西郷どんのパンチを喰らった様な衝撃でありました。
失礼ですが、鹿児島に斯様な旅館が存在するとは信じられなかったです。しかし、館主が全てで最高を目指し、妥協を排して作り上げたと話されているのを拝見して恥ずかしい思いをしました。総ては客のためにと若い従業員の接客、庭やお部屋の手入れ、そして張り詰めたような空気までにも、館主の思いが込められています。
さて、温泉は熱交換機で適温に調節され、加水や貯蔵することなく何時でも「生」が天降殿という湯殿をはじめどこにも掛け流されている。食事は京料理と云ってもおかしくない会席料理が、大凡二時間以上かけて運ばれて来ます。野菜類は地物であることの説明は省かれているが、口に含めば言わずもがな。
今回私にとって節目の旅であることを、予め伝えていた心配りか「特別室」という未だかつて味わったことがない贅沢をさせていただきました。茶室やキッチンが付いた設えです。通常は旅館には泊まるという気持ちで過ごしますが、ここ石原荘では「住む」という気分にさせてくれる何かがありますが、今回その思いを更に強くしました。
写真:客間の玄関、川沿いの角部屋、露天風呂、大浴場(天降殿)、坂本龍 馬・お龍新婚湯治碑(塩浸公園)